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■グレカミュ■ 愛すべきボンクラに告ぐ



「おっさん、あんた馬鹿だろ。」

 呆れたように吐き捨てられた言葉は、容赦なくデルカダールの元将軍の背中に深々と突き刺さった。
 元盗賊のカミュは現勇者の相棒であり、旅の道中に仲間として行動を共にするようになってから、わずか数週間の間に幾度か身体を重ねていた。
 大抵グレイグから仕掛けてしまうのには訳がある。この元盗賊カミュの、存在自体があまりにもセクシーだと言わざるを得ない。過去に一度だけ抱いたこの身体は、あまりにも甘美で倒錯的で、思わず目眩がするほどだった。忘れられないとはこのことかと思うほどに、何度も夢に出てきたものだ。しかし相手は盗賊、こちらとは一生相見えることもないのだろうと思っていただけに、この偶然はあまりにも魅惑的だった。
 幾度目かのキャンプの夜に、眠れずにフラフラと歩くカミュと夜間の稽古に精を出していたグレイグが出会って、そこで二度目の関係が出来た。それからは止まることを知らないかのように、申し合わせたかのように夜中に逢瀬を繰り返しては、身体を繋げていた。
 そんなある時の、情事が終わった直後にそう、カミュに言われたのが冒頭の言葉だった。

「ぬっ、馬鹿とは失礼だな。」

 こう見えても俺は、と返そうとした所で、カミュがうっすらと笑っていることに気がついた。切れ長の瞳を僅かに細めて。
 年甲斐もなく思わず胸が高鳴りそうになるグレイグが、そんな気持ちを断ち切るように咳払いをしてみせた。

「いい加減、上着を着たらいいのではないか?」

 少し暑いと言いながら、未だに乱れたままの衣服で地べたに座るカミュの服に手を掛ける。隙間から見え隠れする桃色の乳首に目を奪われつつも無理やりしっかりと着せ込むと、グレイグは慌てたように視線を逸らした。

「あんたさ、やっぱり馬鹿だよな。」
 
 そんなグレイグを見てカミュがもう一度そう言って笑った。

「さっきまでオレの中に突っ込んでたくせに恥ずかしがるとか、おかしいだろ。」

 カミュの切れ長の瞳がちらりとグレイグの下腹部へと落とされる。ついさっきまでカミュの中に入って大暴れしていた逸物を眺められたような気がして、グレイグはカミュの不躾な視線から隠すように少しだけ身体を背けてしまう。

「ゴホン、お前は、もう少し羞恥心を学んだ方がいいのではないか?」

 グレイグがわざとらしく咳払いをすると、うっすらと赤らんだ頬を隠すようにカミュから顔を隠すように違う方向を向いた。

「そんなもん学んだって食えねえだろ。」

 あっけらかんと笑うと、カミュはいつものように無造作にモスグリーンのパーカーをざっくりと身につける。変わり身の早さはいつものことだと分かっていても、再会してからというもの幾度も肌を重ねた身としては幾分淋しさも感じてしまう。さすがに、事後に幾らだと言われたことはないけれど、最初はそういうものだと思い込んで、懐に幾らか包んで閉まっておいたこともある。
 カミュが満足げに、にっと笑ってグレイグを見てくるのでなんとなくそれでいいのかと、よく分からないままにいまに至っているのだ。
 二人が密会していた木の根元に座り込んで、雑談するのはいつものことだ。ポツリポツリとお互いのことを話すこともあれば、今日みたいに軽口を叩くこともあった。
 青い髪を揺らしてカミュがひとつ、大きな欠伸をする。時刻はおそらく既に深夜に差し掛かろうかというあたりなのだろう。うつらうつらと揺れる青い髪と眠たそうに閉じそうになる切れ長の瞳を見ていたグレイグが、そっとカミュのほうへと手を伸ばした。
 いつもなら、かなりの警戒心で辺りを警戒するのが常のカミュだがさすがに眠たさがきついのか、されるがままに髪を撫でさせる。珍しいこともあるものだとグレイグは内心驚いたが、ここで声を上げたらきっと起きてしまうだろうと喉の奥へと押しとどめておいた。くったりとグレイグの身体に頭を預けて、カミュは本格的に眠りへと入り込んでいく。すぅすぅと規則的な寝息が聞こえ、触れ合った肌からは衣服を通じて体温を交換するような気さえした。
 じんわりと温かくなった触れ合っている場所が、なんだか妙にくすぐったい。もぞりと身動きすれば、カミュの口から抗議のような小さな声が漏れ、グレイグは仕方なしに動くのを我慢するしかなかった。
 隣り合って座って、お互いに肩を寄せあっているのは、いつぞやは敵対した相手。いつぞやは捕まえるために躍起になっていたこともあるのに。
 こんなにすぐそばで、こんなに心穏やかに過ごせるようになるとは。
 グレイグはカミュの寝顔をそっと覗き込んだ。まだ十九歳、一応成人しているとはいえ、グレイグよりもひと回りは歳下なのに、随分と大人びた顔つきをする。その表情故に年齢よりも上に見えることが多いのだが、こうして話してみれば年相応なところもあるものだな、とグレイグは彼の頬をそろりと撫でた。
 その柔らかさに少しだけ感じるのは、背徳感なのだろうか。
 どこか後ろめたく、どこか申し訳ないような気にさえなってしまうのは、彼が自分よりもずっと歳下だからだろうか。
 伸びやかな四肢も水を弾く弾力のある肌も、きめ細かな質感も、すべて自身で触れて確かめた。果実のように甘く感じる彼の舌を幾度となく貪ったのは自分自身だというのに、いまになって急激にしてはならなかったような気にさえなってくる。
 次からはキッパリと断らなければなるまいといつも心に誓うのに、グレイグはカミュの伸びやかな四肢が自分に絡みつき、ほっそりとした繊細な指先が頬に触れ、柔らかくて艶やかな口唇で迫られると、たかが外れてしまうのだ。そうして、まんまとカミュのワナにハマっている気がしないでもない。

 だが。

 それもまた、わがままな猫を相手にしているような感覚にもなり、それでいて、どこか駆け引きめいた楽しさも感じているのだ。
 どこか放っておけないと思っているカミュが、自分にもたれ掛かって眠っている姿をただ眺めているだけで、グレイグはどこか心が浮き足立ってくる。
まるでそれは、懐かない野良猫が懐いてくれた時の嬉しさとよく似ていると思う。自分にだけ寄り添ってくれるという、優越感のような。
 スリ、とグレイグの肩口に寄せられる頬も、ぴったりと貼り付くように並び合ってい座る姿も。
 例えばそれが、本当は少し肌寒く感じて温もりを求めているだけだとしても―――それはそれで嬉しいと感じてしまう。

『おっさん、あんた、馬鹿だろ。』

 カミュが先ほど少しだけ笑いながら、少しだけ呆れたようにそう口にした言葉を思い出した。
 グレイグはうっすらと浮かぶ自分自身の微笑みには気がつくことなく、ぼそりと独り言を漏らす。先ほどのカミュに答えるように、小さくて低い声で。

「…そうかも、しれないな。じゃなれば、余程の酔狂か。」

 柔らかで豊満な胸もない、滑らかな優しい肌でもない。
 艶めいた髪でも無ければ、なまめかしい太ももをしているわけでもない。
 色気のあることばを囁かれたこともないし、流れるような視線で誘われたこともない。
 どちらかと言えば少し痩せすぎで、洗濯板かと見間違うほどにゴリゴリとした胸、細身の割に筋肉はしっかりと付いた、青年の身体に夢中になっている自分は、酔狂としか言いようがないだろう。
 もしもそんなことをカミュに話したら、おまいきり険しい表情をして、冷ややかな視線でグレイグを見て、きっと冷たく言い放つに決まっている。

『おっさん、やっぱり馬鹿だろ。』

 想像するに容易いその表情を思い描いて、グレイグは眉間のシワを深くした。さすがに想像してみると、少しは傷つくものだ。

 すぅすぅと規則的な寝息が、カミュから聴こえてくる。
 ほんのりと体温も上がっているようで、それがさらにグレイグの眠りを誘っていた。
 女神像からは少し離れた場所にいるから、寝入るのはさすがに危険だろう。もう少しだけカミュを寝かせたら、起きるかもしれないが運んでやるとするか。
 グレイグは、カミュの瞳が頬に長く影を落とすその睫毛に視線を取られた。触れれば温かいから分かるものの、こうして眠っている姿はまるで人形のようだな、とグレイグは思った。






 
 
 
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